京都地方裁判所 昭和60年(ワ)258号 判決 1989年2月03日
原告 明清建設工業株式会社
右代表者代表取締役 本間晋一
右訴訟代理人弁護士 柴田茲行
被告 尾上正規
右訴訟代理人弁護士 田中実
主文
一 被告は、原告から金三〇〇万円の支払いを受けるのと引換えに、原告に対し、原告発行にかかる別紙株券目録記載の株券を引渡せ。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。
理由
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は原告に対し、原告発行にかかる別紙株券目録記載の株券を引渡せ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
原告明清建設工業株式会社(以下「原告会社」ともいう。)は、昭和二八年四月一六日設立され、土木建築総合請負等を目的とする株式会社であり、被告は、昭和四一年一〇月一日原告会社に雇用されたものである。
2 株券の所持
被告は別紙株券目録(以下「目録」という。)記載の取得年月日に同目録記載のとおり株式(以下「本件株式」という。)を取得し、株券(以下「本件株券」という。)を所持している。
3 従業員持株制度
(一) 原告会社には右取得年月日前から、原告会社の株式の取得を原告会社の役員又は従業員(以下「従業員等」という。)に限定し、従業員等に対し株式を額面価額で取得(譲受又は新株割当)させる代わり、右取得者が従業員等の身分を喪失したときは、取得した原告会社株式を額面価額で原告会社に売渡す旨の従業員持株制度が存した。
(二) 被告は、本件株式を右従業員株制度により取得したものである。
4 売買契約
(一) 明示の合意
原告会社(代表取締役本間清。以下原告会社の行為につき代表者の記載を省略する。)と被告は右取得年月日前、被告が原告会社の従業員等の身分を喪失したときは、被告の所有する原告会社株式を原告会社に額面価額で売渡す旨の売買契約を締結した。
(二) 黙示の合意
(1) 右取得年月日当時、原告会社内では請求原因第3項(一)記載の従業員持株制度が実施され慣行化していた。
(2) 被告は右取得年月日当時原告会社の経理事務の責任者であり、右従業員持株制度につき原告会社代表者から説明を受けていた。
よって被告は右取得年月日、原告会社との間で、被告が原告会社の従業員等の身分を喪失したときは、右従業員持株制度に従い被告の所有する原告会社株式全部を原告会社に額面価額で売渡す旨の黙示の合意が成立した。
5 従業員等の身分喪失
被告は昭和五九年一二月二〇日、原告会社の従業員等の身分を喪失した。
6 原告会社の本件株券取得
よって、原告会社は前記4の合意に基づいて本件株式を取得した。
よって原告会社は被告に対し、株式の所有権に基づき、本件株券の引渡しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因第1項(当事者)、同第2項(株券の所持)は認める。
2 同第3項(従業員持株制度)、同第4項(売買契約)は否認する。
3 同第5項(従業員等の身分喪失)は認める。
4 同第6項(原告会社の本件株式取得)は否認する。
三 抗弁
1 公序良俗
(一) 本件株券の額面価額は合計金三〇〇万円である。
(二) 本件株券の時価は合計金八四〇〇万円である。
よって、原告主張の従業員持株制度又は売買契約は、被告の投下資本回収を不可能とし、被告に対し著しい財産的不利益を課すものであるから、公序良俗に反し無効である。
2 同時履行
仮に原告が買取る旨の合意があったとしても、これは時価相当額で買取る旨の合意であるから、被告は本件株券の時価相当代金の弁済を受けるまで、本件株券の引渡しを拒絶する。
四 抗弁に対する認否
抗弁第1項(公序良俗)のうち、(一)(額面価額)は認め、(二)(時価)は否認する。同第2項(同時履行)のうち、代金が時価相当額である点は否認する。
五 再抗弁
公序良俗の抗弁に対する再抗弁
1 原告会社は昭和四三年八月二五日、定款により、原告会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する旨定めた。
2 被告は本件株式を総て額面価額で取得した。
3 被告の本件株式所有期間中、原告会社は年一五ないし三〇パーセントの配当を実施した。
よって、被告は本件株式を原告会社に額面価額で譲渡しても、本件株式を保有したことにより充分な経済的利益を得ることになるから、請求原因記載の従業員持株制度及び売買契約は公序良俗に反しない。
六 再抗弁に対する認否
再抗弁事実は被告において明らかに争わない。
第三証拠《省略》
一 請求原因第1項(原告)、同第2項(株券の所持)の事実は当事者間に争いがない。
二 同第4項(売買契約)について
1 《証拠省略》を総合すれば、以下の事実を認定することができる。
(一) 原告会社は昭和二八年四月一六日資本金一〇〇万円で設立、本間清(以下「清」という。)が代表取締役社長に就任し、昭和三〇年八月清の子本間登(以下「登」という。)が入社、昭和三七年及び昭和三八年の増資により資本金六〇〇万円、昭和四〇年三月八日の増資(以下「昭和四〇年増資」という。)により資本金一〇〇〇万円、昭和四二年一二月六日の増資(以下「昭和四二年増資」という。)により資本金二〇〇〇万円となった後、昭和四三年五月清が会長に退き登が代表取締役社長に就任、昭和四八年三月五日の増資により資本金三〇〇〇万円、昭和五二年九月二一日の増資により資本金六〇〇〇万円、昭和五六年二月二四日の増資により資本金八〇〇〇万円となり、昭和五九年一二月登が会長に退き登の子本間晋一が代表取締役社長に就任した。
(二) 被告は昭和四一年一〇月一日、清から経理担当者として原告会社に迎えられて入社、昭和四二年一二月経理課長、昭和四六年一二月経理部長、昭和五二年一二月取締役経理部長となり、昭和五九年一二月二〇日原告会社を退社した。
被告入社前、原告会社の経理事務は清の指導下で山本静夫及び小西紀代子が担当していたが、経理事務能力が不充分であると感じた清は被告を迎え入れ、被告入社間もなく右山本及び小西は配置換となり、被告及び女子事務員一名(後に二名)が経理事務を担当することとなった。被告は入社数か月後には既に経理事務全般を担当し、正式に経理課が発足する以前から実質的に経理課長としての職務を行なっていたが、正式に経理課長に就任したころから、次第に、清は被告に対し経理事務に関する具体的指示は行なわなくなり、社長が登に交代する以前から、経理事務は事実上被告に任されており、昭和四二年増資以降の原告会社の増資に関する事務及び株式に関する事務は、経理課及び経理部の所管事項として被告の責任でこれを行なっていた。
被告は原告会社における功績が認められ、入社後一一年余で取締役に抜擢されたうえ、退職時には金二〇〇〇万円という当時の原告会社及び被告の在職年数に鑑みて破格の退職金などが支払われた。
(三) 昭和四〇年増資の際、原告会社の従業員等約二〇名に対し新株が無償で割当てられていたが、昭和四二年増資の際には、従業員等約四〇名及び従業員等でない者約一〇名(以下「社外株主」という。)に対し新株が額面価額で割当てられた。原告会社は昭和四二年増資の後も株券を発行せず、昭和四三年八月二五日、定款により株式の譲渡には取締役会の承認を要する旨定められた後、同年九月一日株券を発行するに至った。
社外株主の株式は昭和五三年ころまでの間にすべて額面価額で原告会社に譲渡され、株主は従業員等のみとなり、昭和四八年以降の増資では、新株は従業員等のみに割当てられた。
2 右認定事実に加え、《証拠省略》を総合するならば、以下の事実を認定することができる。
被告が実質的に経理課長の職務を担当していた昭和四二年、被告は清に対し原告会社の増資を提案し、清と協議のうえ一〇〇〇万円の倍額増資を実施することで清の了承を得て新株の割当てを開始したが、新株の払込み金額が多額のため引受ける者が予定数に足らず、清が取引先等へ勧誘したが不充分であった。そこで、被告は清に対し、原告会社従業員等に新株を引受けさせるよう提案し、清の了解を得て従業員等に対し勧誘を行なったところ、約四〇名の承諾を得て予定どおり倍額増資を実施した。また、被告は右増資後清に対し、原告会社の定款に原告会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する旨定めた後に株券を発行することを提案し、清はこれを承諾して、昭和四三年八月二五日原告会社の定款に株式譲渡制限の規定が設けられ、更に同年九月一日原告会社株券が発行された。
そして、《証拠省略》中、原告会社の資金作りを始めとする経営全般について当時本間一族が業務遂行したかのように解される部分もあるが、前記認定のとおり、清は原告会社の経理担当者として被告を迎え入れ、間もなく被告を経理事務の責任者としたうえ、倍額増資というそれまでない大規模な増資が行われているのであるから、清としては経理に堪能な被告に逐一相談して昭和四二年増資を実施していることは当然であり、前認定のように、増資につき詳しい被告が清に提案したからこそ大規模な増資がなされたものと見るのが自然である。また、《証拠省略》によれば、登は当時営業関係の業務を担当しており経理事務は清が担当していたことが認められ、昭和四二年増資の経緯については知識が必ずしも正確とは言い難い。従って、《証拠省略》中、右認定事実に反する部分は採用することができない。
また、《証拠省略》によれば、昭和四二年当時原告会社の経営は順調で資金繰も良好であったことを窺えないわけではないけれども、当時原告会社は資本金の額から見てもいわゆる中小企業であり、中小企業の場合はたとえ経営内容が良好であっても大規模な増資の際には新株の引受人に苦労することは間々あることであるから、《証拠省略》によっても右認定は左右されない。
3 前記各認定事実に加え、《証拠省略》を総合すれば、以下の事実を認定することができる。
小西紀代子(以下「小西」という。)は昭和四〇年三月八日原告会社に入社し、昭和四八年一二月二七日退社したが、昭和四二年増資の前ころ、会社事務所で山口美代子らと勤務していたところ、清から、配当があり小遣いにもなるから原告会社の株を買わないかと誘われ、更に退職時には原告会社が額面価額でこれを買取ることになる旨言われ、これを承諾して原告会社の新株割当てを受けることとした。その後も、小西は原告会社在職中、被告又は南専務から誘われて原告会社株式を額面で取得し、退職時には七〇〇株を保有していたが、退職の際右七〇〇株の株券を経理課長であった被告に交付し、引換えに被告から右額面金額相当の金三五万円を受領した。
4 前記認定の各事実に加え、《証拠省略》を総合するならば、以下の事実を認定することができる。
(一) 山口美代子(以下「山口」という。)は昭和四〇年一月一〇日原告会社に入社し、昭和四〇年増資の際に原告会社株式四〇株を無償で取得していたが、昭和四二年増資の前ころ、会社事務所で小西らと勤務していたところ、小西と同様に清から原告会社株式の取得を勧められ、退職時に原告会社が買取ることも含め、これを承諾した。
(二) 山口は昭和四二年増資で六〇株を取得したが、株券は昭和四〇年増資の際無償取得分と合わせて昭和四三年九月一日に発行され、一〇株券一〇枚が交付された。山口はその後、昭和五六年を除く各増資の際も登又は被告から誘いを受けて原告会社株式を取得しその頃株券の交付を受けたが、前記昭和四三年九月一日の場合も含め、株券はすべて会社経理課又は改組後の経理部において被告から交付を受けた。
(三) 山口はその後昭和六〇年五月二〇日原告会社経理課から清と同様の説明を受けて念書を差入れたが、その内容は、同人が既に取得した原告会社株式及び将来取得する同株式は、同人が役員又は従業員の身分を喪失したときは当然に原告会社に対し額面価格で譲渡される旨の、原告会社との間の合意を確認するというものである。
5 前記認定の各事実に加え、《証拠省略》を総合するならば、以下の事実を認定することができる。
宮川修(以下「宮川」という。)は昭和三五年原告会社に入社し、現在取締役第二事業部工事部長の職にあり、原告会社株式四〇〇〇株を保有しているが、昭和五二年八月三一日、以前岸田俊三(以下「岸田」という。)の保有していた原告会社株式一〇〇〇株を譲り受けた。これは登が社外株主の株式を従業員等に移転させようと考え岸田にその旨話したところ、岸田は甥である宮川に無償で取得させたいと希望を述べたため、登はこれを承諾し、宮川に対し事情を話して岸田から株券を受領させたものである。また、宮川は、経理課長であった被告に右株券を交付し、右株券の名義書替の後被告から株券の交付を受けたが、その際被告は宮川に対し、退社時には右株券を額面で会社に譲渡するよう申し向けた。宮川は昭和六〇年五月二〇日、山口の前記念書と同内容の念書を原告会社に対し差入れた。
6 右証人三名はいずれも原告会社関係者であるけれども、小西については、その証言には特段不自然不合理な点も存せず、また同人は昭和四八年一二月二七日に原告会社を退職しており、証言時既に一〇年を経過しているうえ、同人が現在原告会社と特段の利害関係を有する事実もうかがわれないので、敢えて真実を曲げて原告会社に有利な証言をしたとは認められない。また、山口及び宮川はいずれも現在原告会社の従業員等であって、そのために原告会社に有利な証言をする可能性が一応は考えられないことはないけれども、両名の証言は小西の証言と内容的に矛盾しないうえ、両名は現在原告会社株式を七五〇株及び四〇〇〇株各保有しているから、両名が右株式を時価で譲渡し得るとすると、仮に一株六〇〇〇円としてもその時価は四五〇万円及び二四〇〇万円となるので、両名が右利益を放棄してまで敢えて原告会社に有利な証言をしたとは考え難い。よって、右三名の証言は信用に値するものというべきである。
7 前記認定の各事実に加え、《証拠省略》を総合するならば、昭和六〇年四月三〇日ないし同年六月二一日までの間に、原告会社の従業員等全員が、山口及び宮川と同内容の念書を原告会社に差出した事実を認定することができる。
8 前記認定の各事実に加え、《証拠省略》を総合するならば、原告会社株券が発行された昭和四三年九月一日から昭和五八年一月三一日までの間に、従業員等で退社した者は三七名いたが、これらの者はすべて退職のころ所持する原告会社株券を会社経理課又は経理部において返還し、引換に株券の額面価額相当の金員を受領しており、額面より高額の金員の支払いを要求した退職者はいない事実が認められ、更に、従業員等の間で原告会社株式の譲渡は退職者の株式を他の従業員等が額面で取得するのみで、他に従業員間で株式が譲渡された例のない事実を認定することができる。
9 以上認定の全事実を総合するならば、被告が初めて原告会社株式を取得した昭和四〇年増資の前ころ、被告と原告代表者清との間で、被告が以後取得する原告会社株式を、被告退職時に原告会社が額面価額で買取る旨の始期付売買契約が成立した(請求原因第4項(一)の事実)ものとみるのが相当である。
即ち前記認定のとおり、これまでの原告会社従業員等のうち、既に退職した者は被告を除き退職時に原告会社株券を額面価額で原告会社に譲渡しており、他方、現在の従業員等は全員が原告会社との間の右合意を確認する文書を作成しているのであって、これまでの従業員等の内で一人被告のみが右合意の対象外であったとは考え難いばかりか、却って、被告は原告会社在職中を通じて株式事務の責任者として原告会社株式事務全般に深く関与しており、初めて従業員等に対し額面価額で新株が割当てられた昭和四二年増資の実行については被告が清に対して提案し、その実行方法についても清と被告が逐一相談しつつ進めており、右増資の際、清は自ら小西、山口等に対し額面で原告会社株式を取得できる代り退職時には右株式を額面で譲渡するよう申し向けており、清の右申出も被告の提案によるものとしか考えられないところである。更に、被告は右増資後の株式事務について、株式事務の責任者として、退職する従業員の株券を額面で買取る等右合意の存在を前提として株式事務を行なっているのである。従って、昭和四二年増資の際、当時の原告会社代表者であった清と被告との間で、額面価額で原告会社株式を取得した他の従業員等と同様、以後被告が額面価額で取得する原告会社株式は全て、被告が従業員等の身分を喪失したとき原告会社に額面価額で譲渡する旨の合意(始期付売買契約)の成立した事実は明白である。
《証拠省略》中、右合意は存在しなかったとする部分があるけれども、前記認定の各事実に照らして不自然であり、採用することができない。
10 ちなみに、商法二一〇条の自己株式取得禁止規定は会社、株主、会社債権者保護の規定であり、本件は原告が右規定を理由として本件株式譲渡の無効を主張する事案ではない。
三 請求原因第5項(資格喪失)は当事者間に争いがないから、原告は同第6項のように、本件株式を取得したものということができる。
四 抗弁第1項(公序良俗)、再抗弁について
1 抗弁第1項(一)(額面価額)は当事者間に争いがないが、他方再抗弁の各事実は被告が明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。すると、特段の事情がない限り、被告の公序良俗違反の主張は理由がない。
2 即ち、右認定の、原告会社と被告との間の右持株制度ないしは売買の合意は商法の規定する株式譲渡の自由を両者間の契約によって制限するものに外ならないが、株主も合意のうえ契約を締結する以上契約自由の原則が妥当すると解されるところ、商法もこの様な契約の効力を全く否定するものではなく、右契約が株主の投下資本回収を不能ならしめ不合理な内容である場合に限り契約が無効になると解すべきである。
《証拠省略》によれば、昭和五九年一一月二〇日現在での原告会社の株式が一株一万四四九二円であるというのであるけれども、これだけをもって特段の事情があるものとはいえず、一方、原告会社は定款により原告会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する旨定めており、右株式は元々市場における自由な売買が予定されているとはみられないこと、被告が本件株式を総て額面価額で取得していること、被告が初めて原告会社株式を取得した昭和四二年から退職した昭和五九年までの間、原告会社は比較的高率の年一五ないし三〇パーセントの配当を実施したことを総合するならば、被告が原告会社株式を時価で譲渡し得ないことが直ちに投下資本の回収が不可能であるとは言えず、むしろ取得価額は回収したうえで右高利回りの配当を受けた分だけ被告に利益が残ることになるから、右契約が不合理であり公序良俗に反するものとは言い難い。
五 抗弁第2項(同時履行)について
以上によれば、原告会社は被告から本件株式を売買により取得したものであるから、本件株券の引渡はその代金の引換えになされるべきものと解すべきである。
《証拠省略》によれば、原告会社の株式が一株五〇〇円で、本件株式の額面が総じて金三〇〇万円であることが認められる。
六 結論
そうすると、被告は、原告から金三〇〇万円の支払いを受けるのと引換えに、原告に対し、原告発行にかかる本件株券を引渡すべき義務があるものということができる。
よって、原告の本訴請求は右の限度で理由があるのでこれを認容し、その余を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小北陽三 裁判官 河合健司 長沢幸男)
<以下省略>